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【男は女子に興味ないぜ。男は友情の方が大事だぜ理論】

人生で初めてラブレターをもらったのは、小学2年生だった。
学校の帰り、下駄箱の中に封筒が入っていた。
「何だろうこれ?」と隣のA君に聞いた。
「おい、それ、ラブレターじゃないのか」とA君は興奮気味に答え「早く中身を開けてみろよ」と急かした。
どんな文面だったかは今では覚えていないが、「シャキシャキ玉ねぎさん(僕のこと)が好きです」のようなことが書いてあり、ドレスで着飾った女の子の絵が描いてあった。ドレスの女の子は手紙の差出人なんだろう。名前は記されていなかった。

そこでA君が言った。「うわー、ラブレターじゃん。うわー」「シャキ玉これどうするんだよ。お前こんなのもらって嬉しいのかよ」
当然、人生初のラブレターをもらって嬉しくないはずがない。なのに「そんなことないよ。誰だよこいつ。知らないよ。いらないよ」
と強がってみせた。
「そうだよね。俺達友達だもんね。女子なんか嫌いだよね」
ここで未成年特有の【男は女子に興味ないぜ。男は友情の方が大事だぜ理論】が発動した。

「捨てちまおうぜ」とA君は言った。
「おまえいらないんだろ?」とA君は僕に強く同意を求めた。
「・・・・・うん、いらないよ」
独立心なんて言葉すら知らない、若きシャキ玉青年は【男は女子に興味ないぜ。男は友情の方が大事だぜ理論】に逆らう勇気がなかった。
玄関から教室に戻ると、ゴミ箱の前でA君は手紙を奪い取り、「ははは、ははは、ハハハ」と笑いながらラブレターをビリビリと破り出したのである。「ビリ、ビリ、ビリ」くらいではない。「ビリビリビリ、ビリビリビリ、ビ、ビ、ビ」とかなり細かく破り捨てたのである。
教室の片隅でニヤニヤと笑いながら手紙を破る、あのA君の後姿は忘れられない。

スッキリしたA君は「さっ、帰ろうぜ」とそそくさと歩き出した。
ゴミ箱の中を覗くと、ドレス姿の女の子がバラバラに切裂かれていた。胸が苦しくてたまらなかった。


たぶん、あまりに衝撃的なことで、誇大して記憶しているんだと思う。
だけど、A君がラブレターを「捨てようぜ」と言い、僕はそれを断ることができず、A君が教室のゴミ箱に破り捨てたのは事実である。僕は破っていない。
「おまえも破れよ」という鬼の一言がなかっただけましだったろうか。

あのA君は、今どこで何しているんだろう?
A君はお洒落なイケメンさんで、中・高生時代にはめちゃめちゃモテた、僕なんか足元にも及ばない美男子である。

7歳の僕は怖い怖い人間の妬みを知ったのだった。「大事なものだから、捨てることはできない」そう言えなかった、臆病さと共に。

今も忘れることができない悲劇の一つだ。







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Author:シャキシャキ玉ねぎ
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